新規炭素-ヒ素結合形成反応を基盤とした未開拓天然物生合成経路の集積

研究者紹介

研究代表者
星野 翔太郎
学習院大学
理学部

研究概要

ヒ素―炭素結合を有する有機ヒ素天然物は医薬品候補として注目されているが、その生合成に関する既存の知見は、主にSAM依存性酵素が触媒する反応に限られていた。近年、申請者は放線菌が生産する新規有機ヒ素天然物bisenarsanとその生合成遺伝子群を同定し、SAM依存性酵素とは異なる新規のヒ素―炭素結合形成酵素群 (BsnMN)が、鍵中間体であるarsonopyruvate (AnPy)の生成を担うことを明らかにした。興味深いことに、このBsnMNは微生物ゲノムに広く分布しており、本研究では、BsnMNを指標としたゲノムマイニングを通じて、新規有機ヒ素天然物の発見およびその生合成経路に関する知見の集積を目指す。
まず、bsnMN遺伝子を有するゲノム解読株に着目し、化学的・遺伝学的・生化学的アプローチにより、AnPyを中間体とする新規有機ヒ素天然物の化学構造および生合成経路を解明する。さらに、bsnMNを標的とした大規模PCRスクリーニングによってホモログ保有環境分離株を収集し、全ゲノム解析、代謝物探索、生合成研究を通じて、AnPyを起点とする有機ヒ素生合成経路のさらなる拡張を図る。これらの成果に基づき、有機ヒ素生合成経路の予測システムの開発(A02班と協働)や、生合成酵素の改変による多様な生理活性有機ヒ素分子の創出(A03班と協働)へと展開していくことが期待される。