深層学習と自動実験による酵素創出技術の高度化

研究者紹介

研究代表者
石谷 隆一郎
東京科学大学
難治疾患研究所
研究概要
本研究では、生体触媒である酵素の改変技術の効率化を目指す。酵素は環境負荷の少ない新規材料創製や創薬において重要な要素となっており、基質特異性や反応経路を制御して触媒反応をデザインする必要性が高まっている。しかし従来の酵素改変技術には、ランダム変異や人間の着想に依存した変異体設計の限界と、人手に依存した実験サイクルの非効率性という二つの大きな課題が存在する。目的①では、まず深層学習モデルを用いた変異体活性予測システムの開発に取り組む。従来の配列情報のみに基づいた予測では、一次配列上は離れていても立体構造上で相互作用するアミノ酸残基の影響(epistasis effect)を適切に考慮できなかった。本研究ではタンパク質の立体構造情報を帰納バイアスとしてモデルに取り込むことで、予測精度の向上を図る。目的②では、汎用ロボットアームやオープンハードウェアを活用した低コストの実験自動化システムを開発する。変異DNAライブラリの構築、PCRの自動化、プラスミドからのタンパク質合成、評価装置やDNAシーケンサーとの連携など、一連の実験ワークフローについて自動化をめざす。最終的に、実験結果を自動で取得し機械学習モデルにフィードバックする仕組みを導入し、構築低コスト実験自動化技術と高精度予測モデルの組合せにより、酵素設計の効率化を目指す。
