A03-3 酵素を誤作動させる分子による酸化反応の遷移状態設計

研究者紹介

研究代表者
荘司長三
名古屋⼤学大学院
理学研究科

研究分担者
當舎武彦
理化学研究所
放射光科学研究センター

研究分担者
有安真也
名古屋大学大学院
理学研究科

研究概要

長鎖脂肪酸水酸化酵素のシトクロムP450に対して、長鎖脂肪酸に構造を似せた「デコイ分子」を作用させることで、デコイ分子によって反応空間を部分的に占有し、残った空間を新たな反応場とすることで、ベンゼンなどの様々な小分子アルカン類の高効率な水酸化に成功しています。デコイ分子を改良することで、反応系のさらなる高活性化と他の酵素系のへ拡張を可能にするためには、反応系の全容解明とともに結晶構造解析と酵素活性データを機械学習によって連動させる必要がありますが、結晶化を促進するデコイ分子を開発し、高分解の結晶構造解析によって、ほとんどのデコイ分子の結合を評価できる基盤が整っており、A02班との連携によって、デコイ分子を利用する反応系の予知を可能とすることを一つの目的としています。
また、デコイ分子を用いる反応は、天然に存在する枯草菌が生産するP450に対しても有効で、菌体培養液に膜透過性デコイ分子を添加するのみで、反応が進行することを明らかにしております。これまでに開発したデコイ分子以外にも多くの化合物がデコイ分子として利用可能と予想され、A01班が集積する二次代謝産物を中心に枯草菌に対するデコイ分子として利用可能な天然物の探索を行います。さらに、他の酵素群へのデコイ分子システムの拡張展開を進め、活性部位を部分的に占有するデコイ分子を用いる戦略の基盤技術を確立し、A01班で集積する新規酵素群の生体反応を拡張へとつなげます。