コケ植物苔類が独自に進化獲得した代謝酵素を新規な酵素遺伝子資源として活用する

研究者紹介

研究代表者
水谷 正治
神戸大学
農学研究科
研究概要
種子植物は人類の生活に密着した植物であり、作物や建材、燃料、漢方薬など幅広く利用されており、そこに含まれる化学成分や遺伝子情報、代謝酵素なども詳細に調べられている。同様に、放線菌や糸状菌などの微生物からも多くの生理活性物質が単離同定され、ゲノム情報や代謝酵素の遺伝子クラスターなども精力的に解析されている。対して、苔類を含むコケ植物は食料として利用されたことはなく、人類に積極的に利活用された報告もないため、そこに含まれる化学成分に関する情報も少なく、代謝酵素遺伝子に関してはほとんど解析されていない。苔類は多様かつ固有の二次代謝産物を産生しており、その生合成にはこれまでに報告例のない新規な酵素遺伝子が苔類ゲノムには多数存在すると推定される。すなわち、「コケ植物のゲノムは5億年の進化の過程で獲得された未知酵素の集積であり、コケ植物のゲノムにはコケ固有の二次代謝産物の生合成に関わる新規な反応を触媒する酵素遺伝子が集積されている」と想定される。
そこで本研究では、モデル苔類であるゼニゴケを研究題材として、コケの二次代謝に関わる生合成遺伝子を包括的に解明することにより、コケが持つユニークな代謝機能を新規な酵素遺伝子資源として活用することを目指す。特に本研究では、コケ植物苔類にユニークな大環状ビスビベンジル類の生合成に関与する酵素遺伝子を網羅的に解明することを目的とする。
