メタゲノムに隠された抗菌ペプチドの予知と進化創出

研究者紹介

研究代表者
清水 秀幸
東京科学大学
総合研究院
研究概要
多くの薬が天然有機化合物から探し出されてきたが、特に抗生物質に関してはこの50年ほど新薬が得られていない。加えて、薬剤耐性菌の出現により臨床現場で使用可能な抗生物質が不足するという深刻な危機に直面しているのである。この課題に対する有効な手段として、生物が進化の過程で獲得・洗練してきた天然有機化合物である抗菌性を持つペプチドが注目されている。これらは薬剤耐性菌にも有効でかつ新たな耐性菌を生じにくい性質を有するが、開発に高い時間的・経済的コストがかかり臨床応用は未だなされていない。この現状を打破するため、従来の枠組みを超えた新しい予知・創出手法の開発が急務である。
本研究では、アミノ酸配列情報から多様な生物が作り出すペプチドの抗菌活性を予知するシステムを開発し、自然界に未活用ゲノムとして眠っている抗菌性ペプチドの発見および新規創出を目指す。加えて、AI予知システムを演繹的な分子動力学計算によるシミュレーションと融合させ、真に候補となりうるペプチドについて生命科学実験で実証する。さらに、進化系統解析といった生物情報科学技術と予知システムを連携し、抗菌性ペプチドの進化をたどり、計算科学的進化によりペプチドを人工的に「創り出す」ことの学術基盤を構築する。
