構造類似糖脂質MPIase、BPF、ECAの生合成酵素の探索・比較による糖付加戦略の解明

研究者紹介

研究代表者
西山賢一
岩手大学
農学部

研究概要

グラム陰性細菌外膜の主要糖脂質ECAや、内膜でタンパク質膜挿入に関与する糖脂質MPIase、内膜保護に関わる糖脂質BPFは、細胞内における局在や機能が全く異なるものの、糖鎖構造は酷似している。ECAの生合成経路はおおむね解明されているのに対し、MPIaseやBPFの生合成経路はほとんど不明である。ECA生合成に関わる遺伝子を欠損した大腸菌を、グリセロールを唯一の炭素源とした最少培地で培養したとき、どの変異株を用いてもMPIaseやBPFの発現は全く影響を受けなかった。このことは、ECAとMPIase・BPFでは構成糖の活性化様式を含め、糖鎖の生合成経路が全く異なることを示している。したがって、ECAとMPIase・BPFには、それぞれ独立した生合成遺伝子群が備わっていると考えられる。本研究では、我々が発見・同定した糖脂質MPIase・BPFの生合成酵素を同定し、ECA生合成酵素と比較して各糖脂質の糖付加戦略を明らかにすることを目的とする。生合成酵素同定は、大腸菌全遺伝子のプラスミドクローン・ライブラリー(ASKAクローン)検索や、糖鎖構造の一部に相当する化学合成標品を用いたアフィニティクロマトグラフィー、試験管内生合成反応により実施する。これらの研究により同定された生合成経路をECA生合成経路と比較・考察することにより、同一糖鎖化合物を全く別の基質・酵素で生合成する糖付加戦略を明らかにする。これは、新機能をもつ糖鎖をデザインし、創出する技術の開発につながると期待できる。