ラジカルSAM酵素による炭素ラジカル反応の集積

研究者紹介

研究代表者
工藤史貴
東京工業大学
理学院

研究概要

本公募研究では、微生物が生産する天然物の生合成遺伝子クラスター中に多くみられるラジカルSAM酵素の触媒機能を集積することで、予知生合成領域に貢献する。

ラジカルSAM酵素は、3つのシステイン残基が近傍に存在するモチーフを有しており、それらが鉄原子に配位することで特徴的な[4Fe-4S]クラスターを構成している。[4Fe-4S]クラスターには、助基質としてS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)が配位し、還元型の一価の[4Fe-4S]+によりSAMのC-5’と硫黄の結合が還元的に開裂することで、5’-デオキシアデノシルラジカルが生じる。これが、基質の炭素–水素結合から選択的に水素原子を引き抜くことで基質ラジカルが生成する。この水素原子移動を契機として、基質の性質と活性部位の環境に応じて様々なラジカル反応が起こる。

ラジカルSAM酵素が触媒する反応は、様々な天然物ファミリーの生合成に必須な変換反応であり、最終産物の化学構造を決定づける。そこで本研究では、これまでに機能解明に及んでいないラジカルSAM酵素の機能解析を通じて、本酵素ファミリーの変換反応を集積する。

また、ラジカルSAM酵素反応の触媒サイクルについては不明な点が多く、予知生合成領域のキーワードでもある計算科学を活用して解明する。これにより、多彩な反応を触媒できるラジカル反応を制御する手法を習得し、新たな天然物生合成研究に向けた基盤を築く。