植物ゲノム中の多重化酵素遺伝子の機能解析による天然変異酵素反応の集積

研究者紹介

研究代表者
水谷正治
神戸大学
農学研究科

研究概要

ゲノム上で高度に多重化した酵素遺伝子は、代謝酵素が新しい機能を獲得するように進化した軌跡を示す重要な証拠である。多重化遺伝子の一部は進化の過程で偽遺伝子化するが、比較的新しく多重化したサイレント遺伝子の場合、一見すると酵素活性に必要となる配列は保存されており、従って、サイレント遺伝子は触媒反応を行う潜在能力を保持した冬眠状態の酵素遺伝子であると考えることができる。多重化サイレント遺伝子は、目的とする酵素の進化過程で作られた試作酵素、あるいは、未来に新しい機能を持った酵素を生み出す発展途上の潜在酵素なのではないか?と考えた。我々はトマトおよびジャガイモの有毒ステロイドアルカロイド代謝系に関わる2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ(DOX)を同定し、上記の考えと一致する例をすでに実証した。本研究では、植物ゲノム上で多重化している酵素遺伝子について、「サイレント遺伝子は新しい触媒機能を発揮する潜在能力を持った変異酵素であり、多重化酵素遺伝子は天然の変異酵素の集積である」ことを実験的に立証することを目的とする。特に、ナス科植物の多くがユニークなステロイド化合物を生合成しており、ジオキシゲナーゼ(DOX)がステロイド骨格の酸化修飾/構造改変に大きく寄与することが推定される。そこで本研究では、ナス科植物ゲノムに見いだされる多重化DOX遺伝子に着目し、それらが関わる触媒反応を解析することにより、「ステロイド骨格の酸化修飾/構造改変に関わる生体反応の集積」を行う。