大規模ゲノム改変にもとづいた合成生物学育種による天然物生産に特化した麹菌の創出

研究者紹介

研究代表者
丸山潤一
東京⼤学大学院
農学生命科学研究科

研究概要

日本の伝統的醸造産業のみならず、異種タンパク質などの有用物質生産で利用されている産業的に有用な糸状菌である麹菌は、近年、異種天然物生産の宿主として生合成研究に使用されています。我々は麹菌の有用物質生産での分子育種技術を背景に、ゲノム編集CRISPR/Cas9システムを利用して、異種天然物生産のための高効率の多重遺伝子改変技術を開発しました。本技術を利用することで、生産する天然物の生合成遺伝子の効率的導入に加え、その高生産を目的とした無限の遺伝子改変を行う育種を可能として、大規模代謝改変による大量供給に有効であることを示しました。

本研究では、ゲノム構造の大規模改変をもとにした合成生物学育種により、異種天然物生産に特化した麹菌を創出することを目的とします。このなかで、ゲノム編集技術を発展的に活用して一度に数百個レベルの遺伝子を改変することで、高生産でかつ副反応のないクリーンな反応場を効率的に実現することを目指します。学術領域研究「予知生合成科学」において、未利用の天然有機化合物の構造や生合成経路を理論的に予知するシステムの構築により、これを実証するための生合成空間の拡張が求められるなか、この要求に応える効率的な生合成実証ツール、将来的に産業的に資する高生産ツールを提供します。