有機合成化学を駆使したエンジイン抗生物質の生合成機構解明への挑戦

研究者紹介

研究代表者
西川俊夫
名古屋大学
生命農学研究科

研究概要

ネオカルチノスタチンchr. (NCS-chr.)、カリチェアミシン、ダイネミシンAなどの抗腫瘍性抗生物質は、特徴的な9あるいは10員環エンジイン構造を有することから環状エンジイン抗生物質と呼ばれている。2000年代初頭に生合成酵素遺伝子クラスターが特定されたが、高歪みの環状エンジイン部分の生合成に関わる酵素の同定と機能解析はほとんど進んでおらず、構築原理は全く未解明である。本研究者は、NCS-chr. やダイネミシンAなどの生合成研究の最新の成果を有機合成化学的視点から精査し、これら抗生物質に含まれるエンジイン構造とダイネミシンAのアントラキノン構造は、全て「ポリエンイン中間体の連続反応によって一挙に生成する」という全く独自の生合成仮説を提唱するに至った。本研究では、この仮説の合理性を推定基質を化学合成して検証するとともに、この反応を触媒すると考えられる酵素を生合成酵素遺伝子クラスターから探索し、その触媒反応を実証することを目的とする。これによって獲得されるデータは、AIを活用することで、長い間停滞しているエンジイン系天然物の生合成研究を一挙に進展させ、本学術変革領域研究に大きく貢献することが期待できる。